変形性膝関節症では、膝関節の軟骨がすり減って痛みが起こります。
初期に軟骨がすり減りはじめ、中期にはすり減りが進行して半月板が変形し、末期になるとほとんど軟骨がなくなり、骨と骨が直接あたってこすれる状態に。
軟骨が減っていくに従って、症状の「ステージ」があがるのです。
そして、ステージにより選択される治療法も異なります。
今回は、変形性膝関節症の進行度と膝関節軟骨の変化、そして、進行度ごとの治療法について紹介します。
変形性膝関節症の症状レベルと軟骨の関係
変形性膝関節症の進行度は、膝のレントゲン写真を撮り、関節の隙間の大きさをはかって判断されるのが一般的。
軟骨がすり減って関節の隙間が小さくなるほど、「進行している」状態です。
では、初期、中期(進行期)、末期にわけて、それぞれの軟骨の状態を解説しましょう。
まず初期は、軟骨がすり減り始めた状態で、軟骨の下にある骨が硬くなったり、骨棘(とげ状の骨)ができたりします。
軟骨が減ってはいますが、症状は「膝の違和感」「すぐに治まる痛み」などが多く、まだ本格的な症状は出ません。
中期(進行期)では、軟骨のすり減りが進行します。
日本人はもともとO脚気味の人が多いため、特に内側の軟骨が減少。
さらに、膝への衝撃を和らげる役割を持つ「半月板」が変形し、軟骨の働きを助ける「滑膜」に炎症が発生します。
代表的な症状は「歩くとき、いつも痛みを感じる」「膝が腫れたり、熱をもったりする」「痛みがなかなか引かない」などです。
そして末期になると、軟骨はほとんどなくなります。
軟骨がなくなると骨同士が直接こすれ合うわけですから、膝に強い痛みを感じ、立ったり歩いたりする日常動作すら困難な状態です。
膝も変形し、O脚が進みます。
変形性膝関節症の治療法
変形性膝関節症の治療法は、進行具合によって異なります。
初期、中期、末期でどのような治療法があるのか、紹介します。
初期
初期で痛みが強くない場合には、トレーニングなどの運動療法、投薬などの薬物療法、温熱療法、サポーターなどの装具の活用で、症状の緩和と進行防止を目指します。
肥満気味の人は、膝への負担を減らすため、減量指導を受けることもあるでしょう。
初期であっても痛みが強い場合などは、軟骨片を取り除いたり、痛みの元になっている半月板や滑膜の一部を切除したりする「関節鏡手術(関節鏡視下郭清術)」を行うこともあります。
中期
中期(進行期)で、運動療法や薬物療法では効果が見込めないときには、「高位脛骨骨切り術」などの手術が検討されます。
中期の患者に対して検討されることが多い「高位脛骨骨切り術」は、内側にかかっている体重を外側に移して「O脚をX脚にする」手術。
手術後にはリハビリが必要ですが、自分の関節を残せるうえ、十分な時間がたてば、スポーツをすることも可能です。
末期
末期で、関節へのダメージが大きく痛みもひどい場合に検討されるのは、自分の関節を人工関節(インプラント)に交換する「人工膝関節置換術」という手術です。
一部を人工関節にする「片側置換術」と、全部を人工関節にする「全置換術」があり、術後は痛みが大幅に改善するのがメリット。
ただ、末期でも「痛みをあまり感じない」という人なら、手術以外の治療法も選択されます。
まとめ
変形性膝関節症の進行度は、膝関節の軟骨のすり減り具合によって判断されます。
そして、症状のステージにより、運動療法や手術などの治療法が選択されます。
ただ、末期であっても「必ず手術しなければいけない」というわけではありません。
治療法補は患者さんのライフスタイルや痛みのレベルによって選ぶものです。
治療にあたっては、「できれば手術は避けたいけれど、今の自分の状態で、他にどんな選択肢があるのか」ということを、専門家ときちんと相談しましょう。